ふぐの花瓶

ふぐは山口県の一部では
「ふく」と呼ばれているそうです

なんだか縁起がいい
気がします

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花瓶は玄関で様々な花を抱えて
じっと立っている
やってきた人たちは
花を見て喜び
花瓶はその下で
その光景を見守っている

花が枯れたらお別れ　また新しい花と出会う
「こんにちは！」「さよなら！」を
繰り返し繰り返す

ある日ひょんなことで
花瓶がすべって落ちてしまう
びっくりするほど大きな音をたてて
割れてしまった
玄関は水浸し
花は投げ出され
花瓶を大事にしていたおばちゃんが
ひたひたひたと駆けつけて
「あらまー！」

花瓶のかけらを一つ残らず
大事に手に取り
「花瓶さん　長い間お疲れさま」
とつぶやいた

投げ出されたのは一輪のチューリップ
まだ元気に咲いているので
おばちゃんは拾い上げ
はたと思い出した

押し入れの奥にしまってあった
ふぐの絵柄のへんてこな花瓶を
引きずり出し
ふーふーとホコリを払って
さらさらと水を差し
一輪のチューリップを生けた

「こんにちは！はじめまして
　わたしは花瓶のふぐです、いや間違えたー
　わたしはふぐの花瓶です！」

一輪のチューリップは言う
「海の中に立ってるみたいだ！」

おばちゃんは
しばらくじっと眺めて
「こんな花瓶でもなかなか　　ええなぁ」

手際よく掃除を始めた

今日の一枚
題名；ふぐの花瓶
サイズ；30x42cm
販売価格；￥3,500